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「ちょ、大丈夫!?」
「う……うん、大丈夫」
鼻にも入ったようで、数回せき込む。店員からおしぼりをもらい、テーブルのお茶を拭う。
「やっぱり木曜日だな」
「え?」
また反射的に言葉が出た。しかし、そこから先は自分の意志で言葉が出てくる。
「さっきの先輩が大暴れしたのも、木曜日だったんだよ」
「……そうなの?」
「うん。昔からそうだった。テストの結果が悪くて怒られたのも木曜日、部活のレギュラーから漏れたのも木曜日。第1志望の会社に落ちた日も木曜日。君に振られたのも、木曜日」
晴香は瞬きしながら忌野の話をじっと見ながら聞いていた。
「君にとって、木曜は『晴曜日』かもしれない。でも、僕にとっては断トツの『厄曜日』なんだ」
こういうところがある。水を差してしまうことには、褒められたことではないが、人一倍の自信がある。周りの喧騒が大きくなる中、そのテーブルだけは静まり返ってしまった。
それが良くないことは彼が一番よくわかっていた。
「……怖いんだ。木曜日が来るのが。その日を過ごすのが」
忌野から発せられた声は、自分でも分かるくらいか細いものだった。晴香は何も言わず、じっとこちらを見ている。対して忌野はうなだれるように床を眺めた。
「私、金曜日なの」
静かに彼女はそう言った。
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