記憶喪失の僕と約束の手紙

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本日は8月15日朝8時。 久しぶりに帰ってきた家には、少しひげの生えた男性と笑顔で笑う茶色のリボンのヘアピンをつけた女性とたぶん僕の家族写真と思われるものに、その近くには知人?友達?らしいほくろが右目下にある少女とたぶん僕の写真。他にもいくつかの写真がある。なんでたぶん僕と言えたかといえば左頬にほくろがついていたから。 それと他に目につくのは、身に覚えのない手紙。 僕は、ある日以前からが思い出せない。言葉や大人になってからのことは覚えているのに。少し前通り魔事件にあってから、僕の幼少期とそれに関わる記憶が消えている。大人になってからのことでも幼少期に多分関わることは要所要所で抜けがある。 手紙を手に取り封をあけた。消えた記憶の道標を探すため。見つけるために。 「10年後の夏祭り。2022年8月16日18時。○○県の○○町の翡翠村で夏祭り一緒に絶対楽しもう。」宛て名も無ければ、送った相手の名前も書いてない。紙がだいぶ色褪せてることも考えると、相手はその場で書いて渡したのかもしれない。 「とりあえず行ってみるしかないか。幸い場所も書いてあるし。今はインターネットでだいたいのことはわかる。少なくとも場所くらいはどうにかなるはず。」そこから行動は速かった。スマートフォンで○○県○○町翡翠村 8月16日夏祭りと調べて。見事にヒット。一番上が町のホームページでその下は何やかの事件について。知りたいのは翡翠村が何処かと明日夏祭りがあるかなので街のホームページをタッチした。街のホームページは町内の各地のまつりについても書かれていて、そこに翡翠村の夏祭りも書かれていた。そして場所は調べた結果がかなり遠い。今から準備して、一夜泊まって、翡翠村に付くのを目標にしよう。そうきめ、リュックサックに食べ物と飲み物充電器等必要なもの。それから例の手紙をしまい込む。そうして準備ができたら僕は家を飛び出した。僕がしたはずの約束を果たすため、記憶を思い出すために。
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