36人が本棚に入れています
本棚に追加
※ ※ ※
「……まじか、それはまあ、あいつが悪いな」
「明宏くんもそう思う?」
「うん、一緒にいたいのはわかるよ。でも、留学はずっと桃佳の夢だったじゃん。それを辞めろってのは、器が小さいってか、ねーわ」
桃佳は答えず、一口サイズのマカロンの半分をかじる。恋人からもらった壁時計に目を合わせ、「うわ、こんな時間」と呟いた。
「ねえ、わたしもう要らないから食べて」
明宏の口元に、ピンクのマカロンが運ばれる。断面に付着した唾液が、蛍光灯の光を反射して煌めいた。
「は?」
「太るから」
「いいのかよ」
「ん?」
「いよいよ怒られるぞ、あいつに」
「大丈夫、これくらい優くんはゆるしてくれ——」
「ゆるすわけないだろ」
耐えかねて飛び出した僕の声に、画面の中の二人は耳を傾けなかった。
最初のコメントを投稿しよう!