親友が落ちてきた

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 それからスミレは私への不平不満を怒涛のように捲し立てた。 「あんたは昔からあたしのことを見下してた! あたしのこと、自分がいないと何も出来ない弱いヤツだって思って優越感に浸ってるんでしょう?! いっつも上から目線で馬鹿にしてさ、どれだけあたしが惨めに感じてるか冷血なあんたには分からないでしょうね!」   そんな風に思われていただなんて全く気がつかなかった。だけどそれはとても心外だ。 「どっちが冷血よ! スミレのことで私まで悪く言われてるのにあんたは私のことをまるで庇おうとしなかったじゃない! いつもいつもワガママ言って、都合のいい時だけすり寄ってきて最低だよ!」  ギャンギャンとお互いに不満を爆発させて罵り合った。私もスミレも、幼い頃から一度だってお互いを“親友”だなんて思っておらず、嫌い合っていたのだ。本当に馬鹿馬鹿しい、とんだ茶番劇だ。……そのことにもっと早く気がついていたら、にはならなかったのに──。 「もういい! これから先ずっとあんたが好きになる男をあたしが取って捨ててやる! あたしを馬鹿にしたことを後悔しろよ、ブス女っ!!」  先輩が取られてしまう! 私はその焦りから、歩き出そうとするスミレの体を強めに押してしまった。  カシャンと音がしてスミレは細くて小さいその体をワイヤーフェンスに打ちつけた。 「ちょっと、何する──」  耳障りな金切り声をスミレが上げたその瞬間、ガシャン! と派手な音を立てて錆びついたフェンスは根本から折れたのだ。  フェンスに身を預けていたスミレは体勢を崩すと、私の前からフッと姿を消す。愕然として動けない私の耳に、べしゃりと不気味な音が聞こえてきた。そしてややあって校庭から沢山の悲鳴が上がった。  私は自らがしでかした事の重大さに気がつくと、そのまま走り出した。走って走って、校舎裏のごみ捨て場までやってくるとポケットに入っていたスミレからの手紙を細かく千切ってごうごうと炎を巻き上げている焼却炉の中へと投げ入れた。  
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