親友が落ちてきた

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 幼い頃から男に興味がなかった。それは異性に心無い言葉を投げ掛けられることが多かったのが原因だ。  小学生の頃、男子達にからかわれて“ふえ~ん”と可愛らしく泣くスミレを庇えば、「ゴリラ女」「男女」などと言われた。男っぽい顔立ちや体格を気にしていた私は悲しくて悔しかったが、気にしていない風を装った。  中学生の頃、スミレの愛らしさを褒め称える為に男子達は彼女の近くにいる私をこき下ろした。「同じ女だと思えない」「草笛が槇原の可愛さを引き立ててる」と言われたい放題だったが、怒ったり泣いたりすると惨めなのでぐっと耐えた。  そんな風に小中を過ごしてきた私は異性に期待も関心も抱いていなかった。このまま彼氏が出来ずに結婚もしないまま生涯を終えるのだと思っていたのだが、同じ図書委員の一つ上の先輩に私は恋心を抱いてしまったのだ。  副島(ソエジマ)先輩は、地味な人。寡黙で真面目で粛々と仕事をこなす。決して人の輪の中心になれる人ではないが、その落ち着いた雰囲気が私にはしっくりときたのだ。図書当番をしながら私達は言葉を交わした。話題は専ら本のことで、好みのジャンルや作家が先輩と同じであることが私を嬉しくさせた。  私が彼を好きなのだと自覚するのは早く、この想いを大切にして誰にも邪魔されたくないと心から願うのだった。
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