親友が落ちてきた

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 放課後、副島先輩と図書当番をしているとスミレがやって来た。 「まだ終わらないの~? スミレ早く帰りたいんだけどー」  スミレはそう言いながらズカズカとカウンター内に入ってくると私の腕をぐいぐいと引っ張り始めたのだ。 「静かにしてよスミレ。ここ図書室だよ? 先に帰りなって言ったでしょう?」 「コツユちゃんと違ってスミレはぼっち下校なんて恥ずかしいから出来ないの! あんたがいなくてもそっちの人がいるからいーじゃん!」  “そっちの人”と言って彼女が指差すのは勿論先輩のことで、血の気がゾッと引いた。再び制止の言葉を発しようとした私よりも先にスミレは先輩に甘えた声色で迫っていた。 「コツユちゃん借りてくね。いいよね?」  私には決して出せない女の色気を撒き散らしながらおねだりをするスミレにカッと身体が熱くなった。  なんて恥ずかしいことをするんだ! それも先輩相手に! そんなことをして……先輩がスミレのことを好きになったらどうするのよ!!  早くスミレを追い返さないとならないのに、怒りと悲しみで思考が定まらず何も言えなくなってしまった。  すると……。 「図書室では静かにして下さい。用がないなら退室を。それと草笛さんの邪魔をしないであげて」  副島先輩は淡々とそう告げた。  最初こそ何を言われたか理解出来ずにキョトンとしていたスミレだったが、初めて男に拒否されて“邪魔”とまで言われたことが徐々に分かってくると怒りで顔を真っ赤にした。 「はぁ?! コツユちゃん、こいつがスミレのこといじめる! 何とかして!」  わっと叫んで私に抱きついてくるスミレを私は── 「スミレ、早く帰って」  この日初めて拒絶した。
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