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 隣の家で飼われているウサギが、今夜も暗闇に紛れてどこかに出掛けて行く。  奴の毛皮は白いから、完全に夜に紛れることは困難だ。今日のような満月では、なおさら目に付く。 ……  隣の家のウサギの白い後ろ姿を見送りながら、自分もペットとして飼われている家を抜け出してきたミニブタは、心の中で呟いた。  ミニブタだって、薄いピンクがかった肌色をいているから、暗闇に紛れるのは難しい。ましてや、今日のような満月では。  月明りに照らされているウサギの後ろ姿を見てひやひやしているくせに、ミニブタは自分の姿も同じくらい目立っていることはあまり気にしていない。 他人のことは分かるが、自分のことはよく分からないものなのかもしれない。
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