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約束
「はあ〜来週で、私29歳になっちゃうよ〜」
「そうだね、おめでとう!」
「めでたくなんかないわよ、来年30だよ!」
「そりゃあ〜そうだね、今年29なら来年は30だわ。私たち同い年なんだから忘れないわよ」
「璃子は、いいわよ! 結婚してるんだから」
「あれ? 愛華! そう言えばアンタ30過ぎても、まだお互い相手が居なかったら、結婚しよう! って約束してる相手が居たんじゃないの?」
「ん? あ〜そんなのとっくに忘れてるんじゃない? 連絡も取ってないし……」
「高校の同級生だったっけ?」
「うん。野球部のね」
「あ〜そうそう! 愛華がマネージャーだったんだよね?」
「うん。今、何してるんだろう?」
「どうしてるんだろうね?」
「うん……」
元同僚の璃子と久しぶりに会って、ランチして楽しかった。璃子は、絵に描いたような社内恋愛をし、半年前に寿退社した。今は、妊婦さんなので、呑みには行けないからランチにしたのだ。
幸せな璃子を見ると、やはり私は、もうすぐ29歳という年齢に少し焦っていた。ずっと20代で結婚することを夢見ていたからだ。
杉本 愛華
大手自動車部品メーカー 総務部勤務
「どうしてあんな約束したんだろう?」
帰り道、思い出して、1人呟く……
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