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十月桜 第5話
次の週に望楼を訪れたとき、忍は氷青を指名するかどうか迷った。氷青ともっと話をしたかった。氷青とは、心の奥の深い話ができそうな気がしていた。
「氷青はお役目を上がりました。別の望楼の華をお選びください」
女に言われて、忍は心に重い衝撃を感じた。
「氷青とは連絡を取れないのか」
「氷青はもう望楼の華ではありませんので」
忍は女に金を押しつけると、混乱した頭で望楼を出て行った。
氷青とは永遠に会えないのだろうか。子供のころに望楼の「月」が殺されたように。
忍は胸に不穏なざわめきが広がるのを感じながら、椿の回廊を抜けていった。
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