新聞部と曲者の夏祭り

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「てことで、取材いきます」 人気のない場所に移動し、早速取材を開始する。 月屋はおそらく、別件でお取り込み中なのだろう。 電話繋がんなかったらしいし。 ペンを持ち直し、一つ目の質問をする。 「お二人はデートですか?はい、デートですね、ありがとうございます」 「ちょっと杏珠!?俺何も言ってないんだけど!?」 チッ、バレたか。 向山先輩は否定しているが、若林先輩は満更でもなさそうだ。 「じゃあ、何してるんですか」 「誘拐されたの!部活のみんなと遊びに来たら声かけられて、みんな俺のこと差し出すから!」 「そうなんですか?若林先輩」 「まあ」 「誘拐なんですか?それって」 「翔!?君も俺を否定する側の人間なの!?」 春くんの純粋な疑問に向山先輩が悲鳴をあげた。 私はヤレヤレという目で向山先輩を見る。 「相変わらず馴れ馴れしいですね。嫌われますよ、後輩に」 「俺普段ツッコミじゃないのにぃ!」 知ってます。 メモ帳に適当に書き込んでいれば、あまり喋らない若林先輩が口を開いた。 「冬木、一つ相談していいか?」 「え、なんですか?」 レアなことに少し驚く。 若林先輩そこまで喋らないからなぁ。 「どうやったら向山が付き合ってくれると思う?」 「いや、知りませんよ」 あ、どうでもいい話題だった。 「てか、本人目の前にいるのにそれ言う!?」 何度目かの向山先輩の叫び声が響き、私は春くんと顔を見合わせる。 「若林先輩、多分先輩の想いは向山先輩に伝わってると思います」 「杏珠???」 「だから、その調子で頑張ってください!きっと想いは実ります!」 「翔!?」 「そうか……そうだな。ありがとう、冬木。それから、春日も」 「待って待って、なんかすごいいい話みたいになってるんだけど!?」 いいじゃないですか、別に。 「あの、ちなみに若林先輩は今までどんなことをしてきたんですか?」 こんな話になったから気になったのか、春くんが若林先輩に問いかける。 若林先輩は迷いもせず話し出した。 「ああ、それはだな。今まで千回告白したんだが……全て振られてな」 「そうなんですか……え、千回???」 春くんが「ん?」というように私を見てくる。 私はコクリと頷いた。 若林先輩は、まあ、うん! そういう人なんだ! 「てことで向山、結婚を前提に付き合っt」 「嫌だあああああああ!」 最後の最後まで叫びっぱなしの向山先輩により、夏祭り最初の取材は幕を閉じたのだった……。
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