新聞部と曲者の夏祭り

1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
水川高校、新聞部。 部活が盛んな我が学校にしては少人数ながら、大きな権限を持っている部活の一つ。 活動の中心となる校内新聞は高い人気を誇っており、そのおかげでモチベーションの高い部員たちと時に楽しく時に締切日に終わらず発狂しながらも活動している。 学園祭でのナンバーワン記事を決める企画も好評で割と目立てる部活だ。 「俺はリア充が許せない!」 そんな新聞部部室にて。 突如そう叫び出した部長により和気あいあいとしていた部室内が静まり返った。 ただでさえ冷房をガンガンにきかせていて寒いくらいの部室内の気温が更に下がった気がする。 部員である私、冬木杏珠も突然のことに取材の打ち合わせを止めて黙り込んだ。 「え、どうしたんですか。突然」 微妙な空気が流れる中、一緒に打ち合わせをしていた月屋廉が真顔で部長に問いかける。 部長は拳を握りしめ、ドンッと机を叩いた。 「お前たち、そろそろ始まるリア充たちのイベントが何かわかるか?」 「はい?」 月屋は訳が分からないというように首を傾げ、こちらを見てくる。 いや、知らないし。 私はその意味を込めてブンブンと首を横に振った。 そんな月屋の態度がお気に召さなかったのか、部長は机をドンドンと叩く。 「月屋!何気にモテるお前に俺の考えてることは分からないだろう!」 「何気にモテるってそれ、褒められてます?それとも貶されてます?」 「嫉妬でしょ」 「冬木ぃ!」 どうやら図星だったらしい。 部長に半泣きで名前を叫ばれた。 部長、普段はいい人なんだけどこうなると面倒くさいんだよな……。 そのカオスな状況に戸惑っているのか、まだ入部して日の浅い一年生の一人がおずおずと手を挙げた。 「あ、えっと、そろそろ始まるイベントですよね?これですか?」 「それ!それだよ、春くん!」 部長が春くんこと春日翔くんを指さし、声のトーンを明るくする。 春くんが手に持っているのは、一週間後に近所で行われる夏祭りのポスターだった。 「夏祭り!そこで一緒に手を繋いで歩いて花火見てるリア充が俺は許せない!」 しかし、部長の声のトーンが明るかったのもつかの間。 また怒気のこもった声に戻り、こちらをギロリと睨んできた。 「てことで、今度の夏休み直前号では夏祭りではしゃいでるリア充共を恥さらしの刑に処す」 「何言ってんだこの部長」 「はい、月屋は取材担当に決定」 呆れ顔でツッコミを入れる月屋に部長は即行で指示を出した、というか命令した。 月屋の顔にははっきりと「面倒くさい」と書いてある。 「その取材、行かなきゃ駄目ですか?」 「お前は二年!俺は三年!先輩命令だ、逆らうことは許さん」 本当にこの先輩、こうなると面倒くさいな。 副部長や先輩方、同級生も巻き込まれたくないのか誰も部長と目を合わそうとしない。 そんな中、月屋は溜息をついてから口を開いた。 「えー。じゃあせめて他の部員道連れにしよ。野郎と行ってもつまらないし……かといって今まで取材一緒にしたことないと長引くし……冬木、行こうか」 「なんで私が」 「いいじゃん、デートしよ」 「そもそも、付き合ってな……」 「はぁ!?リア充許すまじ!」 何、部長刺激してんの馬鹿!
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!