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「あ~あ。Rn01マイナスの血液があれば、中和できるんだけどなぁ」
「え?」
「期待しないで。Rn01マイナスというのは、3億人に1人。見つけ出すのはほぼ不可能だ。それよりも、そもそも人間がロボットの為に命を懸けることのほうが、確率的にもっと低い。あきらめな」
「それは、本当ですか!」
甲高く、微かに震える声で喋ったのは、ここにいる三人とは別の声だった。レントゲン室のほうから聞こえた。三人が振り向くと、荒げる呼吸を必死に堪えようとする花蓮だった。この場所を探すために、工場内をずっと走り回っていたのだろう。
「お嬢ちゃん。ちゃんと息を吸わないと、呼吸困難になってしまうよ」
真っ青な花蓮の顔を見たマリアは、咄嗟に話しかけた。花蓮の顔を覗き込むように見ていたトーラスも続けて話し掛ける。
「おや。お前さんは、リヒトを捨てた主だな」
前屈みになり、少し重ねた両膝の上に手を突いている花蓮は、必死にかぶりを振る。大きく唾を呑み込むと、ようやく呼吸が整った。
「私は、リヒトの主じゃない」
「違うのか? 俺はてっきりお前さんのロボットかと思ったが」
「リヒトのことを、そんな言い方しないでください! ロボットとか、人間とか、どうして区別をするの。身体を構成しているものが、有機物か無機物の違いだけ。同じ感情を持ち、同じ痛みを知り、同じ安らぎを感じられる。そこに差なんてないわ」
捲し立てるように息継ぎもなく話すカレンに、トーラスは圧倒された。
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