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 花蓮は、自身の部屋の前で、兄の剣機と口論していた。   「だってあいつ、機械だろ。人間がいなきゃ生まれることすらなかった訳だから。俺たちより下の存在じゃないか」 「そういう考えは良くないわ。人間とか、機械とか、どうして枠に嵌めようとするの?」 「違いがあるからだろ。分けたほうが、どっちが優れているか分かり易くなるし」 「分けたから優劣が付くのではなくて、あなたがやっていることは、優劣をつけるために都合の良い分け方をしているだけよ!」 「うるせえ! とにかく人間のほうが優れているのは間違いねぇ。あいつはなあ、生きるも、死ぬも俺様たち次第なんだよ」  バチンというすさまじい音が、廊下を伝っていった。剣機は左の頬を抑えている。華奢な肩を上下に揺らす花蓮は、呼吸を乱していた。 「ってぇな、何すんだよ!」 「最っ低!」    自身の部屋のドアノブを激しく掴み、勢いよくドアを開けると、駆けるように飛び込んだ。ウェーブの掛かった長い髪が肩ほどに舞い上がる。そこへ紛れるように、悲しみに満ちた雫が散った。壊れそうなほど荒々しく閉まったドアは、カレンの怒りの強さを表していた。
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