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 ――それから数日が過ぎた。  支配人が運転する車のルームミラーには、後部座席で景色を眺めている理仁が写っていた。どこまでも続く、背の高いコンクリート壁に覆われた廃棄施設の門前で、車は止まった。新しい仕事だろうか。以前にも、事前に説明はなく突発の仕事を与えられたことがあった。車を降り、門の前に立つと、支配人はこう言った。 「理仁さん。門を潜ったら、警備室へ向かって下さい。そこで入門手続きを済ませ、警備員の指示に従って指定されたゲートへ移動してください」 「はい、分かりました。今日は一体、どんな仕事をするのですか?」 「行けば分かります。いいですか、一度入ると二度と出てこれませんのでご理解ください」  理仁はあどけない顔をして首を傾げた。一体どこに入ると、二度と出てこられないのか。注意しなければいけない場所が、施設の中にあるのだと理解した。  支配人に言われた通り手続きを済ませ、警備員が示したGゲートへ到着した。各ゲートは巨大な倉庫になっており、正面には重機が出入りできるほどの大きなシャッターが閉まっていた。シャッターの横にある非常口用の扉を開け中に入った。    家電なのか、車なのか、原型が分からないほど細かく潰された金属片の塊が、山のように積まれていた。  スクラップ工場だ。今日の仕事は、何かをスクラップするのだと理解した。階段状に積まれた金属片の塊を椅子代わりに座る、一人の男性を見つけた。70代くらいだろうか、衣類が汚れており浮浪者のような風貌だ。左足首から先が無く、ズボンの裾から覗いているのは、金属骨と無数の千切れたコードだった。
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