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プロローグ
抱えるように組んだ両腕をカウンター台に置き、少し前のめりに立っている背の低い少女は、あどけない笑顔で店長に話しかけた。
「ねえ。あっちに置いてある背の高い男の子、どうして商品棚に置いてないの?」
「あぁ、ワケあり商品でしてね。今はまだ小さいですが、腹部にバグが有るんですよ。売れないから廃棄しようと思って、避けてあるんです」
「ふぅん」
少女は、頬に沿って首元まで垂らしている前髪の先を、右の人差し指でクルクルと巻きながら、じっとその商品を見つめた。
「私、その人がいい」
「いいんですか? あのバグは治療法がありません。すぐに、廃棄することになると思いますけど」
「いいの。いくらですか?」
「引き取ってくれるならタダでいいです」
「そう、ありがとう」
そう言った少女は、胸元へ垂れる赤毛の長髪を背中へと払い、商品の仕様を一息に訊いた。
「歳は?」
「18です」
「記憶は?」
「メモリーはフォーマット済みです」
「じゃあ、生い立ちは無いのね」
「そうです。名前も無いです」
「名前も……分かったわ」
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