<1・馬鹿は蹴っても治らない。>

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 ***  桜美聖也という人物に関して、果たしてどこから話せばいいのか難しいところである。  来栖学園は都内でも屈指の進学校として知られている。同時に、サッカー部は全国レベルの強豪という、結構凄いところだ。今でもあたしが合格できたのは奇跡でしかないと思っている。まあ、補欠枠で滑り込んだだけなのだがそれはそれ。なんだかんだ言って合格したのだからもうけものである。  そんな学校に、転校生が来ることなんて殆どない。単純明快、転校生用の枠が極めて少ないことと、転入の際の試験がものすごく難しいことに起因している。裏を返せば、その超絶難しい編入試験をクリアしてこの学校に三年の頭から入ってきた聖也は、それなりに頭の出来も良いはずなのだった。  加えて、顔面だけはS級である。  少女漫画に出てきそうなイケメンとはまさにこのこと。キラキラと星が散りそうな顔面に、爽やかな笑顔、爽やかな声。ついでに、運動神経も抜群ときた。本来ならば、凄まじいモテ街道まっしぐらであったはずなのである。  それなのに。現在、このイケメンは来栖学園屈指の“問題児”として学校中からマークされている危険人物なのだ。  理由はシンプル。こいつがとんでもない変態だったからである。 「いいじゃん、監視カメラと盗聴器くらい!」  がばり、と復活した変態は、やいのやいのと騒ぐ。 「ちゃんとみんなのロッカーに平等につけたんだよ!?翠ちゃんのロッカーだけじゃないです!!」 「全員のロッカーにつけたならOKというその考え方がおかしい」  そう。自分の好きなものを愛でるためならコイツ、マジで手段を選ばない。部室にカメラを仕掛けるくらいはもはや日常茶飯事だと言っていい。ていうか、もう何度も壊されているのに何故反省しないんだろう。まったくもって意味がわからない。あと、そのバカ高い費用がどこから出ているのかも気になってしょうがない。盗聴器も防犯カメラも、相当高価なものであるのは間違いないはずなのだが。 「だって、俺はこのサッカー部のみんなを守るためにサッカー部に入ったんだから!」  変態は聞いちゃいない。えっへん!と胸を張ってとんでもない主張をする。 「だってサッカー部全員、俺の嫁だからね!顧問と監督も含めて!」 「おい、サッカーしろよ」 「もちろん、一番の嫁は翠ちゃんでゆるぎないからそこは安心して!」 「まったく安心できねえわ」
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