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 やたらとリアルな夢を見て、目が覚めた。  ガバッと起き上がって枕元のスマホで確認すると、アラームが鳴る前だった。俺、増井真也にしては極めて珍しい現象だ。  そうだ、目覚める前まで見ていたリアルな夢の記憶。だがそれはどういうわけか、わざわざ思い出さなくても勝手によみがえってくる。    ピエロが出てきた。金髪にとんがり帽、顔はもちろん白塗りで、唇が大げさに赤く縁どられていた。  そいつは、まるでヘリウムを吸ったようなおかしな高音で俺にこう言った。 ──おめでとう。君には、食べてから握手をして視線を交わすと、その日眠る時までその人と中身が入れ替わることができる金平糖をプレゼントしよう。よく考えて使ってね。  はぁ? 食べて握手して視線を交わすと、その人と中身が入れ替わる?  そんな夢みたいなことが起きるわけないだろ、と俺は思った。  だが、少し手の位置を動かすと触れる硬くて冷たい感触。俺は、それを取り上げて顔の前に掲げてみた。  小さなガラスの瓶に入った黄緑色の金平糖。それもたった一粒。  こんな小さな金平糖を食べることで、誰かと入れ替わることができるのか……。 「それなら俺は……」  その相手を想像する。と、同時に反応しがやる俺のムスコ。  今ここで処理してもいいが、時間的にかなりのハードスケジュールになるだろう。  結局、俺は荒れ狂うムスコを何とかなだめ、登校の準備を終えた。
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