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で、後日談っスけど。それ以来、スランプは無くなったっス。また軽音の連中と一緒に合奏できるようになるまで上達したっス。以前までの不調が嘘みたいっスね。あの夢が何なのか未だに分からないけど、自分の気持ちに率直に向き合えたから、不調が治ったンスかねぇ。
あと、乃木と宇野先輩が終業式の日に改めてお礼を言いに来てくれたっスね。その時に俺は宇野先輩にアドバイスのお礼を言って、一曲披露したンスよ。二人とも、めっちゃ褒めてくれたっスね。宇野先輩は
「もう、あの時みたいな怒り任せの演奏じゃないね。良い感じだよ」
って言ってくれたし、乃木も
「私みたいな弱い人に寄り添ってくれる曲って感じだね。雷動くんの演奏、私、好きだよ」
って言ってくれたっスよね。嬉しかったっス! あと、乃木は
「昔、一緒に途中まで帰ってくれて、話を聞いてくれて嬉しかった。あの頃は周りに理解者なんて居ないって諦めてたから、話を聞いてくれるだけで凄く嬉しかったんだよ。あの時、雷動くんは私にとって唯一の味方だったんだ。本当にありがとう」
とも言ってくれたっスね。その時、「あぁ、親父や兄貴にこだわってたけど、俺のことをちゃんと認めてくれる人は昔から居たんだなぁ」って気付かされたっス。
まさか、こうして同じ九条ゼミで二人と再会できるとは思ってもみなかったっスけどね!
……まぁ、それは良いとして、俺が乃木と仲良さそうに話すと宇野先輩の目が怖くなるのは何故っスかね?
じゃあ、俺の話はこれで終わりっスけど……。最後に一つ良いっスか?
月白先輩。あの時の浴衣の女。先輩に似てるような気がするんスよねぇ……。今、先輩は髪を銀色に染めてるっスけど、黒髪にしたら……。
え? 気のせい? そうっスかねぇ……。何か釈然としないけど、まぁいいか……。
百物語の蝋燭がまた一つ消えた。
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