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青年は彷徨っていた。
少しボロボロの剣と、もう一方の手に大きな布の袋を持って辺りを見回す。
暗くなってしまっていて、見える景色が全て同じに思えて、すっかり意気消沈してしまっていた。
青年は街に住む住民からの依頼で、街から近くにある森に魔獣退治に来ていた。
魔獣とは森や平原にいつからか住み着いた魔物だった。その昔、英雄によって退治されたとされる『魔獣』と姿形が似ていることから、同じようにそう呼ばれるようになった
依頼の魔獣自体はそこまで強いわけでもなく、
『3体始末して欲しい』
という”内容にしては”そこまで時間もかからずに依頼は終わった。
依頼人である住人は、魔獣のせいで街の外へ出れない、ということが依頼の理由であったから、別に魔獣は好きにしていい、と言われていた。
初めは気乗りはしなかったものの、そう言われてしまったから、仕方なく請けたのだった。
あとは、始末したことの証明になる『なにか』を依頼人に見せれば良い。
いつもなら首を切って持って行っていたが、今回の魔獣はそれなりに大きく、1人で3つの首を持つのは難しかった。
簡単に運べて、且つ、3体を始末した証明になる部位だと、しっぽだな、とそれぞれの魔獣からしっぽを切り落とし布の袋にしまう。
あとは、街に戻るだけだ。と立ち上がって周りを見回してみる・・・。
どこだここは・・・。
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