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森は何十本、何百本と言っていいほどの木が生えた道―と言っても整備されたようなものではなく、森の植物や動物を仕留めたり研究している人達が意図的に作ったもの―が、あるだけだ。しかも、ほとんどが同じ景色であり、いまさっきどちらから来たかすら、既に分からなくなってしまっている。
『ちゃんとどっちから来たか分かるように、目印をつけて進みなさい』
どこからともなく、嫌という程聞かされてきた文言が耳をとおりすぎていく。
くそっ、なんで今頃思い出すんだ。
魔獣が出現するのは主に夜だ。始末せずに昼間になると、魔獣が人々が往来する道の近くまで移動して、夜を待つように眠っている。
自然に目を覚ますことは、ほとんどありえないが、以前に何度か、たまたま触れてしまった子供が襲われて、ということもあり、定期的に街の自警団が魔獣の始末に追われている。
その自警団では手に負えないレベル魔獣が出現した場合の時に、依頼として話が回ってくる。
毎回毎回面倒ではあるのだが、報酬のことを考えると、請けない訳には行かない。
そして、毎回毎回、同じように迷子になる。
やばいな、今日も野宿だな、と諦めたその時―。
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