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第1話
「ねぇ、あの人が副団長らしいわよ」
「元冒険者の人でしょう? 平民が騎士団の役職に就くなんて、団長様とどれだけ関係が密なのでしょうね?」
「私たちと違ってろくな教育を受けずに大人になって、そんな卑しいのが高貴な役職など務まるはずもありませんわ!」
「「「オーホッホッホッ!」」」
明らかに私への悪口だ。私に聞こえるように言っているとしか思えない。
今、私は王城で毎週末行われる晩餐会の警備をしている。私の後ろには名前しか聞いたことのなかった貴族の面々が集まっており、鼓動が頭に響くほど緊張している。
何せ、今日が副騎士団長になってからの初仕事だからだ。
貴婦人たちの言うことは間違ってはいない。私はもともとモンスターを狩る冒険者だった。貴婦人からすれば、そんな穢れ仕事をしていた私は卑しい存在であろう。
正直、私に騎士団の副団長なんて務まるとは思っていない。騎士団にはすでに、団長の優秀な三人息子『ベーム三兄弟』がいる。その三人を上回る役職を名乗るほどの能力はない。
やっぱり、元に戻してもらおうかな……。
数時間の晩餐会中、私の頭の半分はそのことで埋め尽くされていた。
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