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私たちの馬車には騎士団から数名が同行する。先頭で道案内をするのは、迎撃隊の隊長でもあるリッカルドだ。
王城を出発するときは、たくさんの貴族と騎士が見送ってくれた。
もちろんその中には王都に残るディスモンドやオズワルドの姿があった。どことなく羨ましそうにこちらを見ている気がしたが……何が羨ましいのかさっぱりである。
貴族たちは私など一切見ず、マシューだけを見て拍手をしていた。
馬車の中では、マシューが私のことについて色々質問してくれたおかげで時間をつぶすことができた。
「クリスタルさんは本当にお強いですね。心も体も。私は幼いころから体はあまり強くない方ですので」
「そうなんですか! ですが、王太子としての激務をこなされておられますよね」
「これでも父上の時代より業務を減らしてもらっています。ですので、クリスタルさんを尊敬しています」
「いえいえ、とんでもございません」
「謙遜しないでください。この一カ月間、クリスタルさんがしてきたような生活を私がしたらきっと倒れてしまうでしょう。父上のような強い子を私の世継ぎにできるなら、王家は安泰だろうに……」
このあと王子夫妻と会うこともあって、弱音を吐いたのであろう。王太子としての重圧は測り知れないほど大きなものだということが分かった。
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