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八月第一金曜日の夜。女はホテルのバーのカウンターでカクテルを飲んでいる。毎年夏休みの初日はホテルに一泊することにしている。そろそろ部屋に戻ろうかと思っていたら、店員が「あちらのお客様が一杯ご馳走したいとおっしゃっています」と声をかけてきた。
テーブルの客に微笑みながら会釈すると、男は「こちらで一緒に飲みませんか」と勧める。異論なく女は応じる。
男は今夜から一か月の休暇をホテルで過ごすという。どこかの会社の後継ぎといったところか。毎年このホテルに滞在しているらしい。
話が弾み、バーの勘定は男の部屋に付けて、さらに男の部屋で飲むことになった。
女の部屋に行き、荷物を取り出し、フロントでチェックアウトして、男の部屋に移動する。
互いに休暇を楽しむための滞在なので、外出する予定はない。気楽な休暇の始まりに改めて乾杯した。
女は毎年違うホテルに一泊している。
初対面の男との長い夜が始まる。
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