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大きいおばあちゃんは、わすれんぼう
大きいおばあちゃんは、ちょこんと椅子にすわっていました。
さらちゃんを見ると、質問がはじまります。
「わたし、どこの子やの」
さらちゃんは、ふうっと息をはきます。
また忘れたんやな、と思いました。
「福井の加藤さんちの子。名前は、さらっていうんだよ」
「ほうか、ほうか。いくつやの」
「7さい。小学校の1年生」
「ほうか、ほうか。よお来たのお」
わらうと、目が、しわの中にかくれてしまいます。
「わたし、どこの子やの」
また、さっきの質問です。
「福井の加藤さんちの子。さらだよ」
大きいおばあちゃんは、さらちゃんの手をとると、かさかさした手でなでました。
さらちゃんの手より、少し大きいくらいの手です。
甲に茶色いしみが、点々とありました。
「わたしの手ぇは、すべすべやのお。わたし、どこの子やの」
さらちゃんは、困りました。
でもおかあさんが言ってたことを思い出しました。
大きいおばあちゃんのわすれんぼうは、病気やからしかたがないの。何べんもおんなじこと聞くかもしれんけど、おこらんと、何べんもおんなじこと答えてあげてねって。
「福井の加藤さんちの子。さらだよ」
「ほうか、ほうか。よお来たのお」
おばあちゃんの目は、またかくれてしまいました。
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