セミ、セミ、セミ

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セミ、セミ、セミ

「おねえちゃーん。セミつかまえてー」  げんかんで、しょうごくんが呼んでいます。 「おばあちゃん、外に行ってくるからね」  さらちゃんはそう言うと、あみを持ってむかいました。  外に出ると、花だんのそばにアブラゼミがいました。  そこなら、すぐにつかまえられそうです。  さらちゃんは、そっと近づいて、すばやくあみをかぶせました。 「うん、しょうちゃん、かごもってきて」  さらちゃんはアミの中に手をいれて、セミをつかみました。  セミは足をわさわさと動かして、おなかをブブッとふるわせました。    しょうごくんがどたどたと走ってきて、かごをさし出しました。  あとから、おかあさんも来ました。 「あら、ほんとや。でもよおく見たら、にがしてあげての。セミは長いこと土の中にいて、外に出たら、ちょっとしか生きられんの。その間に、およめさんをさがさなあかんのよ」 「うん、わかった」    さらちゃんとしょうごくんは、かごの中のセミをのぞきこみました。  すきとおった茶いろのはねに、黒いすじでもようがあります。  小さい目は、こげ茶いろのビーズみたいです。    もうちょっと見ていたいな。  やっとつかまえたのにな。  しょうごくんが横から、見せて見せてと言うのもかまいません。  さらちゃんはかごに顔を近づけて、ながめていました。
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