ごせんぞさまはなにしてるの?

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ごせんぞさまはなにしてるの?

 しばらくして、いとこのお兄ちゃんたちがやってきました。さとしくんとゆうまくんです。 「みんな集まったで、おはかまいり行ってこおっさ(行ってこよう)」  おばあちゃんがお線香と、ろうそくを持ってきました。  バケツの中には、お花がはいっています。それは、おばあちゃんが庭で育てたお花です。赤いけいとうや、黄いろの百日草や、マリーゴールド、赤紫の千日紅がありました。 「さらもつんでいく」 「あら、今からつんだかって、すぐしおれてしまうよ」  おかあさんがあわてて言うのをおばあちゃんが止めました。 「いいわの。どれでも好きなのつみねの。ご先祖さんかって、さらちゃんがつんできてくれたら、嬉しいわの」  さらちゃんはぐるりと見回し、背の高いうす紫いろの花をみつけました。 「あれにする」 「どれ?」  さとしくんは、さらちゃんが指さした花のところにいくと、くきのとちゅうを持って、引きよせてくれました。さらちゃんはおじぎをした花をぽきんと折りました。 「これ、何ていうお花?」  まん中が黄いろくて、うす紫いろの細い花びらが何まいもついています。 「それは、しおんていうんよ」  おかあさんがおしえてくれました。  みんなでぞろぞろと坂をくだり、おばあちゃんちのおはかに行きました。 「こんなに暑いと、お花もすぐ枯れてまうのお(枯れてしまうね)」  花いれの水をかえると、持ってきた花にかえました。  ホースの水は、いつまでたってもお湯のようです。 「ご先祖さま、ごめんなさい。冷たい水でないけど、勘弁してくださいね」  おはかの周りに水をかけました。  みんなで並んで、手を合わせました。  さらちゃんはうす目を開けて、おかあさんを見てみました。何か、ぶつぶつ言っているみたいです。 「何て、言うてるの? お願いごとしてるの?」 「なあも。ご先祖さまのおかげで、みんな元気ですよって、お知らせしてるんやよ」  さらちゃんは、ぽかんとした顔をしています。 「どうしたん? さらちゃん変な顔して」 「ご先祖さまって、お仏だんやら、おはかの中で何してるのん」  おばあちゃんは、ふふふと笑いました。 「なあもしてえんよ。そうやなあ。ご先祖さまに心配かけんように、みんなしっかりせえなあかんなあ。ゆっくり寝てもいられんからね」 「え? おはかの中で寝てるのん?」  さらちゃんは、今度はびっくりした顔をしています。 「おばけになって、出てきたら、嫌やろ?」  ゆうまくんが、おどろかすように、にやっと笑います。  さらちゃんとしょうごくんは、いやあと言いながら、坂をのぼっていきました。
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