おばあちゃんちにいく

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おばあちゃんちにいく

 きょうも朝からセミが鳴いています。  ジージージー  松の木にとまっている、茶いろいはねのアブラゼミです。  きょうこそつかまえるぞと、さらちゃんはアミを持ち上げました。 「さらちゃん、早く用意して」  おかあさんが後ろで大きな声を出したので、セミはおしっこをピッとして、飛んでいってしまいました。 「あーあ、もうちょっとやったのに」  さらちゃんは、口をとがらせました。 「セミなら、山のおうちに、ぎょうさんいるって」 「ぎょうさん?」 「うじゃうじゃいるってことや」  きょうはおぼんなので、おばあちゃんちにとまります。  車は、山のふもとで止まりました。  家の前に、おばあちゃんがいます。 「こんにちは!」  さらちゃんと弟のしょうごくんがあいさつすると、おばあちゃんは目を細めました。 「よお来たのお。ふたりとも大きなった。大きなった」    げんかんの重い戸をうんしょと力をこめて開けます。  中にはいると、しょうごくんと走り回れそうな、広い板の間があります。 「なんなはんと、大きいおばあちゃんにも、こんにちはって言うてきね(言ってきなさい)」  おばあちゃんに言われて、ざしきにはいると、目の前がまっくらになりました。しばらく、まばたきしていると、また見えるようになりました。 「なんなはん」は、仏さまのことです。  ざしきの奥に大きなお仏だんがあり、とびらが開いています。  おかあさんがすわって、手を合わせています。  さらちゃんとしょうごくんは、そのとなりにすわり、小さな手を合わせました。
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