ソガシオンの長い一日

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 ムッとした顔の教務主任はぐっと口を引き結ぶと、今度はセルジオさんに食ってかかる。 「ええ。我が学園は自律した淑女を教育する旨を良しとしております。お預かりしている乙女たちが道を進むことが出来るように導き、見守り、育んでいくことが私どもの責務です。ですから、それにそぐわないと思われる生徒には……」  げ。教務主任ってば、私の方を見たわ。 「学園を去っていただく可能性も生じます。ええ、他の生徒への影響というモノもありますし……」  教務主任の冷たい眼差しに、ゴクリと生唾を飲み下す。  私がフグちゃんと仲良くしてるってこと、そんなに悪いことだったの?   イルカちゃん? と小さな声で呟いたフグちゃんが、すまなそうな顔をこちらに向ける。母が、机の下で私の手を温かく……優しく……ギュッと握った。母は私を肯定してくれている。私はグッと顔を上げて教務主任を見返した。  セルジオさんは目を閉じて静かに深呼吸してから、改めて教務主任に向き直った。 「あなた方は何か勘違いをされておられる。他者と繋がろうとする本能は、特性を持ったものだけに存在するモノでは無いのです。なのですよ。太陽フレア以前の、利己的な繋がりを良しとするも温度も無い繋がりから、ようやっと我々は解放されたのです」 「利己的? 理性をもった行動を、貴方は利己的と言うのですか?」  教務主任は、眦を上げてセルジオさんを見た。  セルジオさんは、首を小さく左右に振った。喉元のひだがフルフルと揺れる。  「『特性持ち』は人間以外の生き物の特徴をそなえるが故に、それに沿った行動を取ろうとする。それが生活の支障となる場合には我々カウンセラーが必要となります。『特性持ち』がそうでない者と違うのは、ですよ」
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