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あのあと、ギャイギャイワイワイ色々あって、私の処分は結局「反省文」の提出のみになった。
それも「ことの顛末は正直に話しましょう」というお題でまとめることになっている。未だ保護の対象なのだから変に気を回すなボケ! と言うことらしい。
瓢箪から駒というべきか、高階さんが鷽谷生徒総長の斑目さんに殊の外心酔して「桃園にも生徒会を作りましょう!」とか言い出して鼻息を荒くしていた。
なんでも、鷽谷総合には普通科と専科それぞれに生徒会があって、さらにその代表者がどちらも束ねる「総会」というのを構成しており、総長はそこの代表なのだそうな。つまりは鷽谷総合の生徒の大代表。顔役的な存在らしい。生徒が主催するイベントでは教職員をおして総合責任者を担う存在なんだとか。なんだか凄い人が出張ってきてしまったわけだ。
恐縮してフグちゃん共々頭を下げまくった訳だけれど、「これも将来の糧となる良い経験です」なんてサラリと返される始末。すごい。この人一体何を目指しているんだ?
会議室を出ると、廊下の両側にびっちりと桃園の生徒たちが控えていて更に驚いた。皆事の顛末を固唾を飲んで見守っていてくれたらしい。私の処分が「反省文だけ」と聞いて、口々に安堵と激励とを述べて慰めに来てくれた所為で、一時身動きの取れない状態になってしまった。
20:05
やっとのことで開放された。
私は、皆に別れを告げて、母と共に帰路に付く。
「お母さん、ごめんなさい」
心配をかけたことを改めて謝ると、母は笑いながら手を振った。
「我が子のことは信じているからねぇ。親として当然のことをしたまでよ。それに……」
チラリと上目を返してから肩をすくめる。
「フグちゃん自ら彼自身の特性について聞かせてもらって安心したわ。貴方、ちゃんと大事にしてもらえてるじゃないの」
「ああ……うん。はい」
なんかこっぱずかしい。
「フグちゃんは、……強く掴まなければいいだけだから調整は難しくないの。でも、私は鼻に栓をするわけには行かないから……」
フグちゃんの匂いを嗅いでデレてしまうのは、どうにもコントロール出来そうにない。
「ふうん……」
母は明後日の方向に視線を飛ばしてから、もう一度向き直った。
「私と同じ体質なら、方法はあるわよ」
「え?」
私は目を見開いて母を見た。
そうか。最初から母に聞けばよかったんだ。
匂いに魅かれて結婚した父に対して、母は始終デレているわけでは無い。
それは何かしらのコントロール方法があるからに違いないんだ。
「それって……一体どうすればいいの?」
藁にもすがる思いで母に向き直ると、母はちょっと照れたような困ったような顔をして頭を掻いた。
「んー……あのね、素敵な匂いの人に出会っただけではパートナー成立しないのよ」
「はい?」
パートナー成立? ってそれ、どういうこと?
穴のあくほど見つめる私に、口元を歪めて逡巡してた母は、しばらくしてからやっと重い口を開いた。
「自然界のカップルには、……プラトニックラブは無い……ってこと」
「……っはぁ?!」
それって、つまり、私が、フグちゃんと、セッ……!!!!!
私、全身の血液が一気に脳天に集まって、本日二度目の気絶をするかと思った。
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