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待ち合わせは、想定内というか納得というか……例のレンタルアトリエの入っているビルだった。2階がイベントフロアになっているらしい。
フグちゃん曰く「イルカちゃんはゲスト扱いだから可愛いカッコして来てくれればOK!」だそうだけど……、可愛い格好って何? 以前、フグちゃんから贈られたワンピはバリバリ夏仕様だから、流石に寒々しいし。うーん……。
フグちゃんは言うに及ばず、服飾の他の生徒たちも結構個性的な着こなしをしていたのが脳裏をよぎったけど、いきなりあのレベルに成れるわけでもなし。結局、いつものオーバーサイズロックTシャツにピーコックグリーンのパーカーを引っかけて、洗いざらしGパンで鷽谷駅の改札に立っていた。
もうみんな来てるのかな、と駅前交差点へと一歩踏み出すと、ポンと肩を叩かれた。
「ちわっす。足は大丈夫なのか?」
「あ……」
振り向くと、ダイゴ氏がニコニコ顔で立っていた。
前髪を派手にオッ立てたツンツンヘアに目が行ってしまう。それ以外はごく普通の緩い感じのロンT姿だ。何が入っているのやら、小脇に大きな包みを横抱きにしている。
「その節はご迷惑をおかけしましたっ!」
慌てて頭を下げると、ダイゴ氏は面食らった顔をして辺りをキョロキョロ見回した。
「おいっ! 大袈裟! やめろよこんなとこで! こっぱずかしいっ!」
確かに、通行人の何人かが、チラリとこちらに不思議そうな顔を向けては素通りしていくけど、そんなのどうでもいいくらいにご迷惑をおかけしたわけだし!
「お陰様で、走れないけど歩くのは普通に出来ます」
「あー、わかったから頭上げろよ。青信号だぞ!」
後頭部をクシャクシャとかき回すダイゴ氏。
そういえば、フグちゃんとはいとこ同士だったんだっけ?
困惑顔でソワソワしている雰囲気が、なんとなくフグちゃんに似てる。
「はいっ!」
「おら! 走れないんだろ? ゆっくり行くぞ」
「はーい」
ダイゴ氏は私を気遣いながら交差点へと歩き出した。
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