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再び研究所
「イルカちゃん、お待たせ!」
待ち合わせの烏山公園駅改札に来たフグちゃんは、おかっぱ頭からいわゆるメンズマッシュになっていた。ダイゴ氏の影響か、ところどころに明るい青のメッシュが入っている。
「えー? いいじゃん! 似合ってるよ! かっこいい」
私が褒めると、フグちゃんは、へへっと笑って頭を掻いた。
フグちゃんと私が出会ってから1年。クリスマスからは半年が経った。
進級して、2人とも高校3年生。
誕生日を迎えて18歳になり、「一応成人したから」と研究所から呼び出しが来た。どこからどう情報が回っているのか知らないけれど「その後の経過を知りたい」のだそうな。
「流石にね、いくら童顔だからって言っても、いつまでもボブはないよなって」
まだ私よりは低いけれど、フグちゃんの身長は私の肩を大分越えた。屈まなくてもオデコにキス出来るくらいには。
「でね、10㎝!」
「え?」
「アレから身長10㎝伸びてた! 夏服全滅!」
そう言って、フグちゃん、キラキラした笑顔を向けた。
「……そんなに急に伸びちゃって大丈夫なの?」
「体調? 全然平気だよ」
心配して掛けた言葉に、キョトンとした顔のフグちゃん。
やっぱり、なるべくして伸びているのは違うのかな。成長期だからか、ここんとこデートの時の食事も1人で3人前くらい食べてるのに、すぐお腹空いたって言うし。
連れ立って改札を通り、ホームへ上がる。
「専門学校の指定校推薦取れそうなんだ。昨日、この2年間のポートフォリオを送ったとこ。イルカちゃんのお陰で、学祭のコンペでいい線行けたからね」
「いいなぁ。フグちゃん進路決定が早くて。私は、1学期の成績が出そろってからなんだもん」
フグちゃん、キロリと上目に私の顔を覗き込んだ。
「やっぱ、第二のセルジオさん狙い?」
「うん。大変みたいだけどねぇ……」
階段を上がり切った私は、ホームの遙か先、明るい光のさす方へ目を眇めた。
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