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「あの……そう言えば、ここの教育機関に配属された……、えっと『ザ―マス眼鏡』さんは?」
個人的にすっごく気になっていた、学園から引き抜きにあった特性差別主義の女史は一体どうなったんだろう?
渾名を付けるくらいなんだから、きっとドロシーは彼女の動向を知っているはず。
ドロシーはくるりと振り向いて目を瞬いた。
「あら、彼女の知り合いなの? 最近は可愛いもんよ。愛は世界を救うわね」
「「はい?」」
「かぁのじょは~ぁ、し~んじつのぉ~こいにぃ~お~ちてぇ~🎵」
ドロシーは、いきなり調子っぱずれな歌を歌い出した。
えっ? こ、恋?
失礼ながら、女史はいい加減オールドミスだったような気がするけど……。
「すぅいぃ~とな めぇ~くるめくぅ~ あいのぉ~🎵」
突然両手をヒラヒラと閃かせながら、ドロシーは謎のダンスを踊り出した。
「……ええぇ……」
私たちは、踊りながら器用に移動していくドロシーに、呆気にとられながらついて行くはめになった。
ドロシーの踊りは情熱的で、どう突っ込めばいいのかわからない。
「🎵ふぅたりぃの~ せぇかいはぁ~ にじぃいろに~かぁがやいてぇ~🎵」
とうとう廊下の先まで踊り切り、くるりとターンしたドロシーは、急にスンとなって私たちに振り返った。
「いい加減止めなさいよ」
私は思わずケッつまづいた。
つ、ツッコミ待ちだったわけ?
「すみません。つい聞き惚れてしまいました」
フグちゃんがぺこりと頭を下げて、棒読みで絶妙な謝罪を入れる。
「仕方が無いわね。私、才能にあふれてるから」
ドロシーは肩をすくめて、ヤレヤレと首を振ってみせた。
「作詞、金子美代子。作曲、ドロシー。『愛の目覚め』」
「はぁ……」
「もう二度と歌えないわ」
やっぱ、「知性的」はちょっと疑問?
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