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声かけられ体質
人類は一時期、遺伝子をいじるのがブームになったことがある。
最初は、ある一定の病気になりやすい遺伝子配列を探り、その病気になりにくい体質にする治療として始まったらしい。それが、「肌荒れしにくい体質」「シミを生じにくい体質」とかいう美容面から遺伝子をデザインするようになった。
でも、まぁ、現在は廃れてしまっている。
要は、人類の体に潜む先祖の遺伝子を呼び起こす技術だったのだけど、そもそもが、今の人類には不要と淘汰されたモノだ。顕在化しても、今の生活にはそぐわなかったり、思うような効果が得られなかったり……。ただ、ブームの名残というか何と言うか、最近になっても、時々思い出したかの様に「探求に勤しんだ過去の至り」が出ちゃう人が生まれてしまう。ごくたまにそうはならなかった進化も顕在化してしまうことがある。『特性』と呼ばれるそれらが社会生活に支障をきたすようだと、障碍者枠としてその生活を福祉で保障される。
以上。保健体育の授業で得た知識。
私はスマホを見詰めていた顔を上げた。
待ち合わせはここで良かったはず……なんだけどなぁ。
今朝知り合ったフグちゃんからお誘いされて、鷽谷駅前のモル公広場で待ち合わせ中。私と同じく待ち合わせ中と思しき人々が、モル公の像の下にあるベンチで手持無沙汰に過ごしている。
この乗降客数の多い駅前の目につくところに鎮座しているモル公。遺伝子操作の実験動物として大量に犠牲になったモルモットたちを慰霊する銅像として建てられたらしい。過去の人類の愚かさを象徴するモニュメントのはずなんだけど、今では単なるランドマークになってしまっている。無駄にカワイイのがいけないんだと思う。
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