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「いいかカイル、地図とは魚拓だ」
よく晴れた空から、初老の男の声が聞こえる。
人や自然の営みによって生き物のように絶えず姿を変化させる大地の一瞬の有り様を紙に留める作業は魚拓を取る様に似ている。そしてその地図を手にした者達は見聞を広め、その土地を訪れ、商売を興し、開拓することでまた世界の有り様を変えていく。
故に、大地の変化に終わりはなく。同じく製図にも終わりなし。製図士の使命は、その土地の栄枯盛衰を可能な限り正確に写し取り、今を生きる人々に授けることである――。
砂漠の只中に枯れてなお立つ大樹の周りで、人々は営みを繰り返している。ある者は古文書と樹を見比べ、ある者は地下から帰還した学者と意見交換し、ある者は枕木を砂地に並べて固定し、ある者はリュートを奏でようとして追い回されている。
その姿をロック鳥の背に乗って見下ろし、画板を提げて片手に手綱、片手に筆を握る親子が二人。
「さあ、講話は終わりだ。行くぞカイル。お前に鳥瞰図の書き方を教えてやる。着いてこい!」
「はい、父さん!」
そして親子はロック鳥の背に乗って、スタジアの空へと舞い上がった。眼下からは逃げ仰せた詩人の詩が聞こえてくる。
――故に鳥は空を征く 夢を乗せて空を征く
ここはスタジア砂の国 死の原に栄えし翼の都――
Bird's Eye 完
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