Bird's Eye

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一行の帰還から数日後。再びヘレネメスが部下を引き連れて製図協会のオフィスを訪れた。険しい顔で睨みを効かせるヘレネメスの前のフレンは、部下を連れて余裕のある表情だった。 「『まなざしの樹』の近くを爆破したと聞いたが、いつから鉱夫の真似事をするようになったのだ」 「やむにやまれぬ事情がありまして…。しかし怪我の功名といいますか、おかげで真相に辿り着けました」 「聞かせて貰おうか」 ヘレネメスの問いに、フレンは笑みを浮かべて応える。 「端的に言いましょう。『まなざしの樹』の下には、ロック鳥の始祖の化石と地下水脈の侵食が作り出した広大な洞窟が広がっていました。暫くは大学(アカデミー)の学士達が調査のため、樹の周囲を閉鎖します」 「なんだと!?」 「そして、迷った原因は樹を軸に、独楽(こま)のように一体の砂地ごと回転していたからでした。大地が空洞だからこそ起きた現象です…安全が確保できるまで、迂回ルートを取った方が良いでしょう」 「ふざけるな!いくら叙事詩に謳われる神鳥の遺骨の上とはいえ、『まなざしの樹』の目印なしにどう通れば良いと言うのだ!」 激昂するヘレネメスを見て、フレンはキンダーソンに目を遣る。キンダーソンは頷くと、机の上に地図を置いた。 「そう仰ると思って、我々から迂回ルートの提案をさせて頂きます。現在、調査と並行してこの形状通りに木道を敷設(ふせつ)している所です…。ルートは商会、万事屋、冒険者協会の3つの情報(データ)を元に割り出した安全地帯を元に、キンダーソンとウッドが作成しています」 「む、むむ…いつの間に」 地図に書き足されていたのは、樹を円盤(ラウンド)状に取り囲む斬新な形状の道路。確かにこれなら旋回によって道路が壊れることもなく、進路を誤ることもない。 「そして、都の側には目立つよう旗を立てることを提唱しました。最低限北の方向さえわかれば、後はどうにでもなるかと」 「……フン!」 ヘレネメスは鼻を鳴らすと、地図を受け取って立ち上がった。 「良いだろう。神鳥の遺骨発見という慶事に免じ、これで勘弁してくれる。不備があればまた言いつけに来るからな!」 遠ざかる一団の足音を聞き届けると、三人は笑顔で手を打ち合わせた。こうして、世界製図協会は大冒険の末、無事に依頼を成し遂げたのだった。
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