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空母艦は月へ向かった。長い時間がかかった。
若い女性は小さな亡骸からその想いを手のひらに受け取った。
―― 「どうしましょう」
―― 「どうされましたか」
―― 「ふんわり手に包んででるものですから、指の間からぴょんとお耳がでちゃうんです」
―― 「可愛らしい想いさんですね」
―― 「大丈夫、わたしたちがあなたを届けてあげますからね、きっと」
青い星へと舵をきった。
青い星が近づき、血気だつ戦死者たちを青年将校はなだめた。
―― 「もうすぐ会えますからね」
若い女性は小うさぎの想いを撫でた。
あの病院にいた。
―― 「こんな姿になってしまって。」
痩せて廃人のようにベッドに横たわる男性がいた。
若い女性は見かねて目を伏せた。
将校は頭を下げた。
―― 「時間がかかりすぎました、申し訳ありません」
女性は、くっと目を上げ
―― 「わたしが、なんとか、わたしの孫を担当させます、あの子なら、きっときっと、気付くはずです。あの子なら彼の体を治してくれます」
―― 「うさぎさんの想いはどうしましょう」
将校はどうしてよいかわからなかった。
―― 「わたしには考えがあります、一縷の望みしかありませんが、わたしたちがそうであったように、燃え残る想いに賭けてみましょう」
―― 「あなたは女性らしくとて優しいのに、元帥のような面を持った方だ」
将校は体を整えると、彼女に敬礼した。
彼女は深々とお辞儀した。
―― 「そうなれば、鍵を握るのは私の孫です。どんなことをしてでも彼女に彼を担当させます」
―― 「ウサギさんは、この男性の、ここに、いれておけば良いのです。きっとうまくいきます」
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