呻きトンネル

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 夜中の十二時半。現場付近に到着すると、実験室から持って来た測定器でデータを記録する。  夜中というのもあり、他の車もなく静かだった。 「これからトンネルに入るぞ。坂下、スマホで撮影しててくれ」  トンネルの中は、心細くなるくらいに暗かった。しかも全員、声を出さないようにしているので、まるで一人で乗っているようだった。そして、何も聞こえなかった。  トンネルを出てすぐに、路肩に車を止めて後ろを振り返った。良かった、二人とも居る。安堵しているのを悟られないように、なるべく素っ気なく坂下に言う。 「動画、再生して」  再生された動画には、最初に俺の運転する後ろ姿があり、トンネルに入ってほぼ真っ暗になった後にまた、俺の後ろ姿が現れ、そこで終わっていた。 「何も聞こえなかったな」  大木が安心した様子で言う。 「そうだな。次は反対車線から行くぞ」 「うー」  大木め、安心して帰るつもりだったな。  車をUターンさせて反対側からトンネルを通った。また何も聞こえず、坂下の動画でも、人の声らしきものは何も入っていない。 「続けて何往復かするから、俺が止まるまでは動画は止めないで」 「田山、何かに取り憑かれたか?」 「大木、これはアドレナリンと言うんだ」
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