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「混む前に、品出ししとこか。律くん、お酒やってんか」
いつもこんな調子で面倒な仕事を振ってくるのだが、何故か憎めない所があった。
「分かりました」
律は返事して、バックヤードの冷蔵庫の裏側に回った。ケースに入れられたビールや缶チューハイを、冷蔵庫の裏側に表と同じようにあるガラスドアを開けて補充していく。店内をガラス越しに見る事ができる。それはどこか盗み見をしているようで、律はこの作業は好きだった。色んな人の様子が観察できるのは、コンビニ勤めの数少ない楽しみだった。
東京で芸術系の専門学校を出たものの、職に就けなかった。今風のグラフィック・デザインの方に進む手もあったが、何か違う気がしていた。
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