夕立のあと

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 東京で住むには経済的にも厳しくなったから、叔父夫妻も住んでいる京都に越した。幼い頃に来た京都の街並みが興味深く、産業的にも芸術系、技術系の会社が多いというのも魅力的だった。越してはみたがすぐに職にありつけるほど簡単ではなく、こうしてコンビニでアルバイトをしながら、たまの休みに風景画やデッサンをしに出掛けるような日々だった。  望んでいた事でもあった。元々、東京の物事の速度に自分の感覚は向いていないのだ。そうやって時間ができると、人を観察するようになった。人それぞれが、自分の描く対象であるように思えたからだ。  ひと通り補充ができた所で店内に戻ると、同じタイミングで入口の自動ドアが開いて、女性が一人、入ってきた。薄い水色の浴衣を着ている。黄色と赤の花柄が鮮やかだった。帯は紺で、すっとした立ち姿だった。
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