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何となく目が合って気まずくなり、レジの方を見たが岸田はまた居なかった。律は慌ててレジに入った。
「…いらっしゃいませ」
ボソっと言うと「こんにちはぁ」と独特の京都人のイントネーションが返ってきた。
女性は髪をきちんとアップにしていて、少し蒼白いような首筋が見えていた。今日の花火大会を見に行くのだろう。
女性は律の背後の煙草の棚を見ていた。
「あの、マルボロブラック、てあります?」
この人、煙草を吸うんだな、と律は何となく思いながら、「十四番ですね」、と機械的に棚から商品を取り出した。
「あ、それ、二つください」
言われて律はもう一つを取出し、レジ台に置いた。
「ありがとう」
女性の声はのんびりしているが、少し高い音で、耳ざわりが良かった。風鈴のようだ、と律は思った。
「ほかには、何か」
訊くと、女性はやんわり首を横に振った。
「お会計お願いします」
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