夕立のあと

5/7
前へ
/22ページ
次へ
 バーコードリーダーを手にして、律は会計をした。彼女はスマートフォンの決済サービスで支払いをした。判で押したような手続の機械的な音声が、律は好きではなかった。 「袋に入れますか」 「あ、大丈夫です」  律が煙草二箱を差し出すと、女性は持って来ていた巾着のような袋のついた籠バッグに、そっとそれを収った。  そこへ、ドアが開いて岸田が入って来た。また外で気分転換をしていたのだろう。岸田は律が居ないと、よく店の前の小さな駐車スペースでコーヒーを飲んで時間を潰している。  岸田は律の前に立っている女性を見て、さっきまでとはうって変わった楽しげな表情になった。 「なんや、どこの別嬪さんか思たら、佳代ちゃんかいな。今日はデートか?」  佳代と呼ばれた女性は、岸田の知り合いのようだった。ほんの少し頬を赤らめ、 「知らん。おっちゃん、それセクハラやで」  と誤魔化すように答えた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加