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バーコードリーダーを手にして、律は会計をした。彼女はスマートフォンの決済サービスで支払いをした。判で押したような手続の機械的な音声が、律は好きではなかった。
「袋に入れますか」
「あ、大丈夫です」
律が煙草二箱を差し出すと、女性は持って来ていた巾着のような袋のついた籠バッグに、そっとそれを収った。
そこへ、ドアが開いて岸田が入って来た。また外で気分転換をしていたのだろう。岸田は律が居ないと、よく店の前の小さな駐車スペースでコーヒーを飲んで時間を潰している。
岸田は律の前に立っている女性を見て、さっきまでとはうって変わった楽しげな表情になった。
「なんや、どこの別嬪さんか思たら、佳代ちゃんかいな。今日はデートか?」
佳代と呼ばれた女性は、岸田の知り合いのようだった。ほんの少し頬を赤らめ、
「知らん。おっちゃん、それセクハラやで」
と誤魔化すように答えた。
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