夕立のあと

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「そやかてなぁ。びっくりするがな。律くん、美人さんや思たやろ?」  急に話を振られ、律は少し戸惑いながら、 「えぇ」と頷いた。  実際、綺麗な人だとは思ったが、それが何か別の気持ちを動かすという感じではなかった。自分より幾分、歳は上だろうと感じた。すっとした立ち姿とおっとりした仕種の中には、子供っぽい感じは無い。煙草がその印象を強めたのかもしれなかった。 「あんまり苛めたったら可哀想やで。なぁ」  佳代が律の方をちらと見て岸田に言った。 「律くんはええ子やから、そんなん気にせぇへんのよ」  京都に来てから時間は経ったが、東京育ちの律はまだこの手のやり取りには馴れなかった。どこまでが本気で、どこから人をからかっているのか、分からないからだ。  話には加わらず惣菜の入れ替えの準備をしていると、佳代が近づいて来て片手で拝むようにして、 「堪忍な」  と小さく声をかけてきた。
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