花火のあと

1/2
前へ
/22ページ
次へ

花火のあと

 夜の九時前に、盛大な打ち上げ花火で締めくくりとなり、そこでまた帰宅する人々が店に押し寄せた。岸田は地域の顔なのか、来る客や若者にひっきりなしに話しかけられていて、律はその分、ただ黙々とレジをやり、煙草を出し、夜間便の配送を受けた。冷房の効いている部屋にいても、少し背中に汗をかいた。  それも一時間程で落ち着いた。通りの人声が急に遠くになって、店内は虚ろに聴いた事がない女性グループの歌が流れていた。  岸田がレジカウンター内の台を椅子代わりに腰を落ち着け、自分の肩を揉みながら言った。 「よう頑張ったな。お疲れさん」 「お疲れ様でした。今日きつかったっす」  岸田が頷いて、大きく伸びをした。 「上期クライマックスシリーズみたいなもんやからなぁ。よう二人で切り抜けたで。もう上がり。あとは何とかするから」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加