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夕立のあと
夕立が止んでも、湿気は洗い流されずかえってその濃度を上げたようだった。だが空は先ほどまでの曇天が嘘のように晴れ、傾きかけた夕陽が雲に色を挿していた。
店の前にある可動式の庇を金具で短い丈にして、通りの人の出を横目に見ながら、律は店内に戻った。ほんの少し外に出ただけで、汗が滴って、手の甲で拭った。
このコンビニでアルバイトを始めて半年ほどになるだろうか。京都の夏は初めてだった。鴨川からほど近い場所にある為、店舗もさして大きくは無かったが、客は毎日多く、特に夜は二台のレジをフル稼働しても、行列がすぐ出来てしまう。ここの所は暑い日が多く、客足は絶えなかった。
「花火、やるんですかね?」
レジについている店長の岸田に訊くと、
「やるて書いてたで、ホームページに」
呑気な声が返ってきた。元々酒屋だったここをコンビニにした先代の息子で、飄々とした男だった。
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