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どうして花には黄色が多いのだろう。花だけじゃない。信号の真ん中もレモンも近所の公園のすべり台も黄色だ。トイレのタオルもだ。好きな色を問われたら、僕は黄色と答えるだろう。黄色の花を買って花瓶に差した。男の一人暮らしなのに。その理由を聞いたなら誰も僕を笑わないはずだ。
何から話したらいいのだろうか。僕の生い立ちのこと? そんなくだらないことは必要ない。僕が語りたいのは、あの日々たちだ。今でも思い出すと喉の奥が痛くなって、瞬時に涙が溢れる。悲しいのではない。どうやら脳と涙が直結しているようだ。熱いものがこみ上げてくる。手にはまだ感触が残っている。頭の中にははっきりとあなたが映る。僕はきっと初めて人を好きになって、自分以外の人間たちをやっと大切だと思えるようになり、やっと人並みの感情を抱けるようになったのに、自らそれを捨てた。捨てたという表現は気に入らない。変わらざるを得なかったと自分に言い聞かせいる。愚かだった。僕は昔も今もずっと愚かだ。僕は、悲しい。あなたは記未という名前だった。あなたのことはたくさん覚えている。よく着ていた服も匂いも。髪型はいつも違っていたね。長く一緒にいたのに、今は僕は一人でいる。それが、現実だ。あなたはどうなんだろう。考えるとほうら、また涙が流れているよ。あの場所にとどまっていたらよかったのだ。そうしたら、幸せが確実だった。僕は血迷ったのだ。多く人が一度は間違いを犯すように、判断を誤った。そして、大きなものを失った。たわ言ではない。その証拠に僕は泣いている。信じて欲しい。あなたのことを思い出して泣いている。今日は天気がいい。あの日に似ている。あなたがいたあの日、あなたが笑ったあの日、あなたが悲しい瞳を見せたあの日。幸いなことに僕は暇人だ。だからゆっくりを思い出すことにしよう。それには僕の生きてきた経緯が少しばかり関係するから大まかに話すとしよう。順を追って、ゆっくりと。
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