壊れかけた夜

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 ガラガラゴロゴロ~ズドドドド――――ン。  部屋の外では驚くほど大きな雷が鳴り響いている。  近くにデカいマンションがあるおかげでこちらに落ちる心配はないが、こうもやかましくては落ち着かない。  せめて室内の空気くらいは快適にしようと、エアコンの湿度設定を調整する。  大きくなった作動音とともに排出される風が身体を癒やしてくれた。  雷鳴は緩んではいないが、これで少しは眠りにつきやすくなるだろう。  まったく、いつから世界はこんなことになってしまったのか。  気象環境は異常のひと言で、天変地異のごとき天候が繰り返される。  コウモリ由来と言われる肺炎ウィルスは世界に満ち、いまだ収束の気配を我ら人類に察せさせない。  さらには侵略戦争の勃発により、世界情勢は混迷を極めている。  物価は超高騰。ストレスをため込んだ人々はギスギスし、凶悪犯罪まで巻き起こる。  その様は、世界崩壊の進行を想像してぬぐえない。 ――これでは仕事に障るな。  脳内に巡る思考を停止させまぶたをとじる。  そんなに簡単に寝付けるものでもないが、ネガティブ思考を育むよりは影響は少ないだろう。 ――願わくば偉大なる(あるじ)の導きにより世界に平穏が訪れんことを……  だが、そんな祈りを引き裂くように、最大量の怪音がまき散らされた。 「うぎょぎょぎょぎょ――――っ!!!!??」  あまりの音量に変な声をあげ、ベッドからとびあがる。  近くに落ちたのだろうか?  気づけば点けっぱなしの常夜灯が消え、耳障りなエアコンの音も消失していた。  リモコンを操作してもウンともスンともいわない。  どうやら停電らしく、窓の外も真っ暗だ。  状況を確認しようと携帯端末を手に伸ばすが、そこでようやく異変に気づいた。  携帯端末が使えない。  いかに停電で電化製品が無力化したとはいえ、電池やバッテリー式の機器まで動いていないのはおかしい。  みれば時計の秒針も、進む仕草をみせようとはしない。  いったいどうなっているのか?  異常事態に混乱しながらも、これがこの部屋だけのことなのか、それとも全世界的なトラブルに発展しているのか?  それを確認するためにノブに手をかけ、ドアを開け放ったが……ドアの向こうはどこにも繋がっていなかった。 「!?」  まるでゲームの未設定区域に踏み込んでしまったかのようなまっくらな空間。  デバッカーとして参加したゲームのβ版でそんな状況に陥ったことはあるが、あくまでもそれはゲーム内での話である。  いったいなにが起こっているんだ?
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