壊れかけた夜

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 おっかなびっくり手を伸ばしてみるが、暗闇に触れるものはなかった。  足を伸ばしてみると、あいまいな感触な床があり、そのまま奈落に落ちていくというわけではなさそうだ。かといってそれがいつまでも続く保障はない。  進むか、このまま待つか考えてみる。  進むには正直勇気がいる。  なにせ状況が状況だ。未知に挑むというよりも、不可解さに対する困惑のほうが強い。  かといって、このまま待つという気にもなれない。  いつまでもこの状況が維持されるとは限られているし、状況の悪化がないとは言いきれない。  いまは問題なく呼吸できているが、それもいつまで続くのか……。  ここは覚悟を決めるしかないだろう。  闇とは異なる無音の空間をひとり歩きはじめる。 ――まさか本当に世界が壊れたというわけではないだろう。  ベッドの中で夢想したことを反芻しながら疑ってみるが、あまりにも馬鹿馬鹿しい仮定に失笑する。  それなら自分はベッドを出ておらず、ひどい悪夢に捕らわれていると考えたほうが、まだマシである。  人間、直接的な害を感じないと、意外となれるもので、精神から少しずつ警戒感が薄れていた。  それが災いしたのだろう、いつのまにかやってきた方角を見失ってしまう。  慌てて引き返そうとするが、自らの部屋がどこだったか、みつけられずに終わった。それどころか進んでいた方向すらも見失う。  しばし途方に暮れていると、視界の端に光るものをみつけた。  光源の正体はわからないが、他に現状を打開するヒントは見当たらない。  進む以外の選択肢を選ぶ余地はなさそうだ。  近づいていくと、光はその数を無数に増やしていった。  等間隔に並んでいて、かなりの密度で集まっている。  その面積は近づくにつれ広がり、視界が徐々に光の壁に埋め尽くされていく。  そこはある意味、世界の終わりだったのかもしれない。
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