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院内に入った時はざわざわと騒がしく感じたが、受付隣の階段を昇って二階へ来ると、騒ぎ一変して静かになり、微かに赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。
少女の右手首には三色に彩られたミサンガが着けられている。
祖母の手に引かれ、階段を昇ってきた友香は、見覚えのある白とピンクに居ろ塗られた廊下を奥の病室に向かって走り出そうとした。が、タイミング悪く病室から顔を覗かせたのは父親だった。
「パパ!」
その声は廊下だけじゃなく病室の中まで聞こえる大きな声だった。
「友香!病院では静かにしなさいって言っただろう」
父親の声も病室から廊下の先まで聞こえるくらいだから、かなり大きい声だ。
それでも、友香は「はぁい」と祖母の手に隠れるように顔を隠しながら返事をすると、足早に病室へと近づいた。
「赤ちゃんは?」
病室の中に顔を覗かせると同時に父親に尋ねると、「あそこだよ」と指を指した。
窓際の太陽の光を背にベッド上に座る人影が見えた。
その姿はすぐに幼い友香でも誰だかわかった。
「ママ!」
光を背にしているから母親の表情はわからない。が、友香には笑っているように見えた。そして、影が微かに動く。右手で小さく手招きをしてくれたのだ。
友香は静かにゆっくりと母親のベッドに近づく。
その手には静かに眠る小さな人形のような赤ん坊が抱きかかえられていた。
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