魔法使いの腕輪 ~約束~

4/13
前へ
/14ページ
次へ
 17歳を迎えた夏の終わり。  土砂降りの夕立の中を姉の友香は着ていた服を破かれた状態で帰って来た。  その姿を見た母親の裕子は、青ざめた表情で「どうしたの、友香!」と玄関先で叫んだ。  友香は母親に抱き着くと、大声で泣き叫んだ。  リビングから顔を覗かせた玄弥は、「姉ちゃん・・・?」と驚いた口調で声を出すと、友香の鳴き声が一瞬にして止み、母親の体から離れると靴を脱ぎ棄てながら階段を昇って自室へと駆け込んでいった。  その夜。父親の智也が帰ってくると、母親の裕子とずっと話をしていた。 「・・・は、本当なのか・・・?」 「あの子がそう言うの・・・。魔法の腕輪を盗まれたって・・・」 「ヤバくないか・・・?」 「ヤバいとかいう問題じゃないわ・・・。あの腕輪の使い方を知っている身内が盗んだのなら・・・。魔法を解放されたら・・・」 「すぐに見つけないと・・・?」 「あの子にも言ったわ・・・。気持ちが落ち着いたら一緒に探すって」  智也は厳しい表情を見せながら、「落ち着いたらって・・・、いつだ?」と聞き返している。  玄弥は自分の部屋でその両親の会話に聞き耳を立てていた。  玄弥の部屋の前の廊下を誰かが歩いていく。足音からすると姉の友香に間違いない。  友香は静かに階段を下りていくと、両親のいるリビングへと向かった。玄弥の耳には聞こえないが、友香は二人に何か話をした。それに対する両親の反応は静かだが、すぐに慌ただしく動き始めたことから、結論はすぐに出されたことなのだろう。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加