不安な思い

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不安な思い

母の入院は、長引くだろうと先生から言われた。 そして、1人での介護は、私の負担が大きいと、退院しても、精神科の病棟のある介護施設への転院を勧められた。 もう、一緒に暮らすことはないのかな… 安心するような寂しいような…複雑な気持ちだった。 それに…、時々岸本さんから連絡が来る。 「早苗を返せ!」 と。 恋人と無理やり引き裂かれたのだから、それが当たり前の感情だ。 でも、娘の私の感情だって当たり前だ。 母を治したい…娘のその願いは当たり前のはずだ。 岸本さんの娘さんとはちゃんと話せていることが、岸本さん本人とは、すれ違う言葉ばかりがお互いに出るだけだった。 岸本さんに母を会わせたくても、入院中は家族以外面会不可で、恋人の関係の岸本さんを連れていけない。 入院直後の今なんて、家族ですらガラス越しでしか会えない…。 今は、 「ごめんなさい。退院したら会えます」 その言葉を繰り返し伝えることしか出来なかった。 でも、私としては、岸本さんに会わせたくなかった。 また元に戻ってしまう不安が私の頭の中を過るからだ。 怖いんだ。 これ以上悪化してしまったら…と。 母にとって、どうしたら良いのか分からないまま、母の居ない日々が過ぎていった。
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